精密科学コースについて

精密科学の目指すところ

精密科学教室の前身である精密工学教室は、物理学を基本に自然現象の“精密さ”をその極限まで駆使し、創造性に富んだ高度な“物づくり”技術の創出を目指した世界で初めての学科として、昭和14年に大阪大学に誕生しました。以来、半導体やエネルギー、情報・通信、宇宙に関連した最先端科学技術を切り拓く基幹工学の拠点としての役割を担うまでに発展を遂げ、従来技術についてはもちろんのこと、ナノテクノロジーやIT技術のさきがけとなる多くの成果をあげてきました。そして平成7年度の大学院重点化に伴い、精密工学教室は基礎科学への志向をより鮮明にすべく精密科学教室へと改称するとともに、教室全体が一丸となって共同研究に取り組める組織になりました。このような共同研究体制のもと、平成8年度には、文部省の中核的研究拠点(Center of Excellence;COE)形成プログラムに採択されました。「完全表面の創成」をテーマにして、国際的研究拠点「大阪大学・超精密加工研究拠点」が精密科学教室に形成され、大きな研究プロジェクトがスタートしました。さらに平成13年度には、「超精密加工研究拠点」における研究成果が高い評価を受け、工学研究科附属超精密科学研究センターの開設へと更なる発展をとげています。

これからの社会の発展のために先端技術に求められるのは、原子・分子のスケールでの“物づくり”であります。たとえば、IT社会を支える次世代の超高速コンピューターのCPUや、1チップで100Gbitを超える高度に集積化された半導体メモリーを開発するためには、原子レベルで平坦な表面を作る技術や、ナノメートルオーダーで制御された構造を造り込む技術、いわゆるナノテクノロジーが必要とされています。しかし、これらは従来の生産技術を、経験に基づき改良・洗練していくだけでは成し得るものではありません。新材料、新プロセス、新デバイス、極限計測などの技術開発、特に製造プロセスに利用する物理・化学現象を原子・電子論の立場から深く理解し、高度に利用する「原子論的生産技術」と呼ぶべき新しい“ 物づくり”技術を開発することが非常に重要です。このような「原子論的生産技術」の開発を支える新たな学問領域が「精密科学」です。現在の精密科学教室は、まさにその対象とするスケールが原子・分子のサイズにまで到達した“物づくり”の技術を開発するとともに、「精密科学」という学問領域を拓きつつあります。精密科学教室の目指す「原子論的生産技術」は、あらゆる最先端科学技術分野において、21世紀の技術革新のキーテクノロジーとして期待されています。

精密科学教室は、学部組織が応用自然科学科に属し、自然科学の分野における充実した教育体制を基礎に、大学院工学研究科・精密科学専攻の「機能材料領域、先端機器システム領域、量子計測領域、原子制御プロセス領域、超精密加工領域、計算物理領域」の6つの研究領域からなる大講座、および物質・生命工学専攻に属する応用表面科学講座、工学研究科附属超精密科学研究センターにより構成されています。それぞれが、「精密科学」に基づく“物づくり”のための4本柱である材料、加工、計測、計算物理のいずれかの分野を担当し、密接かつ有機的な連携のもとに教育・研究を行っています。

精密科学教室では、これまでに独自の最先端研究施設ウルトラクリーンルームを完成し、「原子論的生産技術」を具現化した独創的な装置を開発して、原子一つの乱れもない完全に制御された表面の創成に挑戦しています。現時点において、世界最高性能の表面を創成する技術を確立し、超精密加工の分野において世界をリードしています。さらに、独創的な成膜法やナノ構造形成プロセスの開発にも成功しており、高性能X線光学素子や次世代半導体、高効率太陽電池などを対象にした具体的な“物づくり”のための実用化研究にも積極的に取り組んでいます。
それらの成果は、日本の将来を担う先端産業や自然の根源を明らかにする基礎科学の発展のための鍵を握っているのです。「精密科学」それは、まさに自然現象の“精密さ”の極限を追求することに他なりません。

精密科学教室は、これからも常に時代を先取りした創造性に富んだ“物づくり”技術の創出にチャレンジします。そして、共に研究に携わる若者達が世界をリードする個性豊かなサイエンティストとなり、これからの科学技術の開拓者となることを確信しています。

お問合せ・アクセス

〒565-0871
大阪府吹田市山田丘2-1
大阪大学 大学院工学研究科
精密科学・応用物理学専攻
精密科学コース

E-mail:
www_admin[at]prec.eng.osaka-u.ac.jp

アクセスマップ

HOMEへEnglish