完全表面を考える −加工現象の理論的な解明−
完全表面創成過程の解明
EEMにおける加工現象の第一原理分子動力学シミュレーション
プラズマCVMにおける加工現象のシミュレーション
溶液反応による加工現象の第一原理分子動力学シミュレーション
薄膜形成過程の第一原理分子動力学シミュレーション
新しいシミュレーションプログラムの開発
完全表面創成過程の解明
EEMにおける加工現象の第一原理分子動力学シミュレーション
EEMは、微細粉末粒子の化学的な反応性を利用した超精密加工法です。多くの金属酸化物や半導体、金属の表面では、配位数が不飽和な原子上に、水酸基が化学吸着していることが知られており、この様な表面どうしが作用した際に、酸素を介した界面結合が生じます。EEMにおける加工メカニズムは、このような界面反応が生じた際に、加工物表面原子のバックボンドの結合力が低下し、これによって容易に表面原子の除去が行われる場が形成され、加工が進行するものと考えられています。
EEMにおける化学反応素過程である微細粉末粒子と加工物表面原子との化学反応過程をその加工過程を第一原理分子動力学シミュレーションプログラムを用いて解明し、さらに各種加工物材料に応じた最適な粉末粒子材料の予測を行います。
Si、Ge結晶表面にZrO2粉末粒子が作用したとき、粉末粒子表面原子が作用している加工物表面第一層原子と第二層原子との間の結合エネルギーを量子力学に基づいて、計算しています。
用いたモデルを右上図に、その結果を右中図に示します。図より、バルク状態での結合エネルギーはSiのほうがGeよりも大きく、強い結合になっています。そこにZrO2粉末粒子が作用しますと、その結合エネルギーはSiのほうがGeよりも小さくなり、結合が弱くなることが分かります。EEM加工実験により、機械的強度の高いSiのほうがGeより加工速度が大きいという結果を得ています(下図)。この実験結果を理論的に裏付ける結果を得ています。
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プラズマCVMにおける加工現象のシミュレーション
プラズマCVMの化学反応素過程の原子・電子レベルでの解明を第一原理分子動力学シミュレーションプログラムを用いて行うとともに、さらに高能率な加工が可能な反応系の非経験的な予測をします。
Si表面原子のダングリングボンド近傍にハロゲン原子を吸着させた際に、Si原子周りの電子状態にどのような変化が起こるかを計算しています。ボンドの弱体化に対する影響は、F原子が吸着した時の方がCl原子が吸着した時より大きいことを示すことができ、プラズマCVMにおける加工実験結果を定性的に説明することが可能となります。
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溶液反応による加工現象の第一原理分子動力学シミュレーション
反応溶液と相互作用する固体表面の第一原理分子動力学シミュレーションを実行し、表面原子の液層への溶出機構を解明します。これにより、完全表面を作製することが可能な新しい加工プロセスの開発に必要な基礎的知見を得ることができます。
下図は水素終端化されたSi表面がどのようにOH-イオンと反応して除去加工されていくかをシミュレートしたものです。図より、表面のステップ近傍に配置した4つのOH-イオンにより、シリコン原子間の結合強度が弱くなっていく様子、その結果、表面ステップ端のSi原子が第2層Si原子との結合を失い、除去加工されていく様子が見てとれます。
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薄膜形成過程の第一原理分子動力学シミュレーション
成膜プロセスにおける表面反応素過程を第一原理分子動力学シミュレーションプログラムにより解明し、高能率な反応系の非経験的な予測を行います。
NH3のSi(001)-2×1再構成表面における最安定吸着構造を解析した結果、NH3はNH3単体で吸着するより、NH2とHに解離した後、吸着する可能性が高いことが明らかになっています。
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新しいシミュレーションプログラムの開発
シミュレーションを高速かつ高精度で実行可能にするため、分子軌道法、実空間差分法などを取り入れた、新しいシミュレーションプログラムを開発します。
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Last revised on Mar. 25, 1998 by M. Nakano